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お知らせ

詐欺被害について

 最近、「国際ロマンス詐欺」「仮想通貨に関する詐欺」が流行っています。

 また、さらに、そういった詐欺案件を「解決します」と謳う弁護士事務所について、中に問題のある弁護士業務広告があるとして、東京弁護士会が注意喚起(https://www.toben.or.jp/know/iinkai/hibenteikei/news/post_7.html

を行っています。

 

 私は、20年以上にわたって、詐欺被害や、特に、投資・儲け話としての消費者被害案件を多数取り扱ってきました。

 特に、商品先物取引被害は裁判案件含めて、力を入れて取り組んできました。

 

 最近の詐欺案件は、業者側が、正体の知れない会社であることや個人であることが多く、裁判を起こせば勝訴できても、被害額を回収することが困難なケースが多いです。

 それでも、事件を受ければ、可能な限り、交渉や法的手段を駆使して粘り強く回収に努めますが、回収可能性が極めて低いケースのほうが多いのが実情です。

 

 ですので、

「国際ロマンス詐欺に遭われた方は、お電話を!」

というような広告など到底できません。

 

 私自身、詐欺案件を相談されることは多く、一見困難に見えたケースも含めて解決した経験も多い(もちろん、何をやっても解決できなかったケースも多々あります)ですが、こういった案件は「法律相談を受けても、依頼を受けないケース」の割合も高いです。

 

 というのは、回収可能性が低い案件というのは、どうしても、依頼者に一旦さらに「持ち出し」を覚悟して、また、「費用倒れ」の可能性が大きいことをわかってもらわなければ受けられないからです。

 

 弁護士費用は、通常、着手金と成功報酬金からなりますが、ある程度トラブルとしての実質がある事件となると着手金を数十万円程度はいただかなければ、弁護士事務所としては成り立ちません。

 特に、回収可能性が低い事件ならば、成功報酬金も見込みにくいですから、なおさら、着手金は通常どおりの金額をいただかなければ赤字になってしまいます。

 

 そこで、

 

  • 詐欺に遭って経済的にダメージを負いながら、これを弁護士に依頼するとなると、さらに着手金数十万円のお支払いを頂く必要がある。それだけ、追加の出費があるということ。
  • ただし、これは、弁護士が動く対価であるから、依頼する以上は避けられない。
  • そして、この事件は、そうやって弁護士を依頼したとしても、返金を受けられる可能性は正直言って相当低い。
  • 従って、弁護士費用分だけ経済的にはマイナスになる可能性が高いが、採れる法的手段を採ることに意味がある、と考えられる場合だけ、依頼してください。

 

と説明することになります。

 

 ここで、依頼者の立場として、

 

「回収見込みが低いことに、これ以上のお金をかけられない」

 

というのも、十分に合理的な判断です。

 ですので、その場合は「依頼を受けない」ことになります。

 

 一方で、

 

「費用倒れになっても構わないので、採れる手段は採りたい」

 

というのも、費用をかけても筋を通すという意味で、もっともな考え方です。

 この了解、納得があれば、回収可能性が低い案件でも弁護士は依頼を受けて取り組むことができます。

 

 ですから、弁護士としては、こういう詐欺案件を相談されたとき、依頼者にとっての利害得失を説明したうえで、依頼するかどうかを慎重に考えていただくべきと思います。

 

 実際に詐欺に遭われた状況というのは経済的にも心理的にもダメージは大きいだろうと思いますので、それを考慮して、着手金を「少し抑える」程度はすることがありますが、それでも、弁護士自身が赤字仕事になるような減額はできません。

 

ですので、「国際ロマンス詐欺に遭われた方は、お電話を!」と広告を打って多数の事件を集める(薄利多売のような仕事をする)などということは、少なくとも私には到底考えられないことです。

 

 冒頭の、東京弁護士会の注意喚起は、「難しい案件なのに、難しい案件と言わずに受けようとする弁護士の広告」への注意喚起として必要なことと思います。

 

 今までは、詐欺被害に遭われた方には、「とにかく弁護士や消費生活センターに相談してください」という言い方をしてきましたし、これからもそう言いたいですが、今は「詐欺案件解決の難しさも含めてきっちり説明してくれる弁護士に相談してください」と言ったほうが良さそうです。

 

 とはいえ、詐欺被害に遭った方に対して、

 

何ができる、できない

弁護士に委任すべきか、そうでないか

 

含めて、やっぱり弁護士が力になるべきだと思いますし、その意味で、私や当事務所に限らず、(この記事も参考にしていただきながら)お近くの弁護士、法律事務所、弁護士会を頼っていただければと思います。 

 

神戸むらかみ法律事務所

 代表弁護士 村上英樹