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お知らせ

大学講義 ~事故被害者の生活再建(リカバリー)支援について~

4月11日に、関西福祉科学大学にて、交通事故等の被害に遭い重度の後遺症を残した方のサポートについてお話しさせていただきました。

 

 以前、「神戸リカバリー研究会」という名称で、交通事故等の被害者の生活再建について、

 

  当事者(四肢麻痺等の障害を有する方)

弁護士

  医療関係者(作業療法士、言語聴覚士そのほか)

  社会福祉士

  建築士

  建築会社

  福祉器具販売会社

 

などの異業種が連携するための研究会を定期的に行っていたことがありました。

 

 そのとき縁があり一緒に勉強させていただいた 現・関西福祉科学大学の助教 本多伸行氏から声をかけていただき、作業療法士になる予定の大学4年生に1コマ授業をしてきました。

 

 事件または事故により、重度の後遺障害を負ってしまう。

 たとえば、頚髄損傷による四肢麻痺であったり、頭部外傷による高次脳機能障害であったり、そういう場合、生活をどのように再建するかの道筋が全く分からないのが普通です。

 

 道筋が見えない、誰を頼っていいのか分からない状態に対して、専門家が分野を超えて協力して「ロードマップ」を示せるようにする必要がある、という話をしました。

 

 私たち弁護士は、

 

  損害賠償請求事件として、加害者や保険会社から、適正な賠償金を支払ってもらう

 

  そのために、示談交渉や裁判を行う

 

ということが中心になりますが、重度の後遺障害案件の場合は医療職との協力が欠かせません。

 

 裁判で認められるためにはどんな材料が必要か?

 いいかえると、医療職の方にお願いしたい協力について、「裁判所はこういう視点で見ている」という考え方を説明し、「説得」のための協働の呼びかけをさせていただきました。

 

 私が過去に取り扱った、高次脳機能障害の裁判案件(いずれも、「判例時報」に掲載。下記)について、弁護士、本人・家族と医療職との連携・協力がいかに役立ったか、という話もご紹介しました。

 

【判例雑誌掲載の高次脳機能障害案件】

① 小学生女児の被害事案について労働能力喪失率を90%とし、男女平均の賃金センサス平均賃金にて逸失利益の賠償が認められた例(大阪高裁平成19年4月26日判決、判例時報1988号16ページ、後遺障害等級第5級)

 

② 求職中の成人男子の被害事案について労働能力喪失率を85%として逸失利益の賠償が認められた例(神戸地裁尼崎支部平成23年5月13日判決、判例時報2118号70ページ、後遺障害等級第5級)

 

 

  事件・事故被害者の方のサポートについて、当事務所のスタンスは、

 

  • 弁護士が、自分の本来の守備範囲(法律問題、示談交渉、裁判など)のサポートを万全に行う

 

とともに

 

  • その範囲に限定せず、弁護士・事務所の持つ人の繫がり、ネットワークを最大限活かして、医療職、その他の専門家についても、当事者が「真のプロ」に出会い支援を受けられるように、可能なサポートを行う

 

  • 当事者のサポートに関わる専門家同士が、密に、滑らかに連携をとって、当事者が「あっちでこう言われ、こっちでこう言われ」という立場にならないよう、安心できるサポートを目指す

 

というものです。

 もちろん、事案ごとに、すぐに最適な専門家に出会えることばかりではないのですが、異なる分野の支援者の協力が大切という考えのもとで、サポートさせていただいています。

 

 実際、 高次脳機能障害 や 頚髄損傷の事案で、私が協働する他の専門家の皆さんは本当に頼りになる方が多いので、事故被害の法律相談を受けるときにも、私自身大変心強く感じています。

 

 話を大学講義のことに戻しますと、これから作業療法士になる学生さんが、とても熱心に私の話を聴いて下さいました。

 感想も、これから患者さん一人一人に真正面から向き合いたい、という姿勢が強く伺え、頼もしい限りでした。

 一例として、医療職の理解する情報について、相手が患者であれ、弁護士であれ、裁判官であれ、「納得できるように伝え、知ってもらう努力をしていかなければならない」、それこそが本人の助けになると思う、との感想があり、大変うれしく感じました。

 

 もう4年生の学生さんとは1世代分は歳が離れていますが、「必要な人の助けになる」ために、世代も超えて、協働できるということなどは、それもまた仕事をする喜びであって、皆さんが仕事に着かれる未来が楽しみに思えました。