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家裁で遺産分割や離婚の調停が早く進むように ~期日を2回先まで入れる運用

 今年に入って、神戸家庭裁判所(本庁)での調停の進め方に変化がありました。

 かなり、迅速化しています。

 

 遺産分割(相続)事件や、離婚事件が、家庭裁判所の調停事件の典型例です。

 

 これらの事件はこれまでとても時間がかかっていました。

 なぜかといえば、調停期日が開催されたとき、次回の調停期日を決めるのですが、これが2か月以上先になることがしょっちゅうあったからです。

 裁判所の都合、お互いの都合を調整して次回を決めるのですが、今日82日だとして「ちょっと、裁判所の都合で、もう10月以降しか入らないんですよ。」と言われるケースが多かったのです。

 結果、2か月に1回ペースでしか調停が進まず、夏期などより期日が入りにくい時期もあるので、5~6回調停を行えば1年以上かかあるというのが普通と言ってよいくらいでした。

 そうなると当事者が本格的に争っている事案では、調停事件の解決までに2~3年(相続事件ではそれ以上)かかることも珍しくありませんでした。

 もめごとを早く解決したいと思うのが依頼者の気持ちですから、弁護士としても自分の側で出来る準備は極力迅速に進めていくのですが、いかんせん、調停期日は2か月先にしか入らないとなると、片方の当事者だけがいくら努力しても早く終わらないもどかしさがありました。

 

 そんな調停の長期化に対して、今年から良い変化がでてきたのです。

 

 具体的には、例えば、今日82日に遺産分割(相続)の調停が行われたとして、次回期日について

  次回  913

というだけではなく

  次々回 1015

というところまで日程を決める運用がなされるようになったのです(神戸家庭裁判所本庁の運用)。

 

 先の予定というのは調整がしやすいので、こういう風に決めていくと、調停期日から次の調停期日の間に2か月も空くというケースは減ってきました。

 結果的に、約1か月ごとに1回程度、調停が開催できるようになりました。

 おかげで、以前だったら1年はかかっただろうと思われる案件も6か月前後で調停成立(解決)に至るようなスピードに変化しています。

 

 良い話なのですが、一方で、

 

「こんな単純なことでそんなに早くなるなら、なぜ今までしなかったの?」

 

と思う人は多いのではないでしょうか。そう思うのも無理ありません。

 

 ただ、裁判所の役割は特別なものがありますから、色んな点でルールの運用が厳格であり、(裁判官や調停委員、書記官、事務官などの)「個人の判断で柔軟に」とはなかなかいきません。

 そのせいもあって、手続きが複雑であったり、時間がかかったりする、という面はあります。ある程度は致し方ないところもあります。

 

 ですが、やはり、個人個人の人生の時間において「トラブルが頭の隅から離れない」という時間にはしんどさがあり、できるだけ早くその状態からフリーになれることが幸せに繋がることが多いものです。

 その点で、裁判所が、「仕組み」の部分を改善して、調停事件が迅速に進むようになったことはとても良いことと思います。

 

 朝の連続テレビ小説「虎に翼」は戦前~戦後の裁判所が舞台ですが、昔から今、今から未来への変化も見据えながら、これからの司法、法的なサポートの在り方を創っていくのが現代を生きる法律家の役割と思っています。

 その意味では、裁判所に、事件の中身だけではなく、裁判所の運用についてユーザー側からの意見を伝えることも大切です。

 こういう改善要望を出す場というのもあって、民事事件、家事事件、刑事事件など種類ごとに、「裁判や調停の進め方」について裁判所と弁護士会が協議をする機会が年に何回かあります。

 私もそのような協議会に弁護士側の委員として参加することが多いので、利用しやすい司法になるように、裁判所へ提案できることがあれば、引き続き積極的に行っていきたいと思っています。

 

                                                                  神戸むらかみ法律事務所

                                                                        弁護士 村上英樹