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お知らせ

不動産の共有解消がしやすく~2021年民法改正~

1 はじめに

 「不動産の共有を解消したい」という相談、案件は非常に多いです。

 遺産分割事件も、「不動産の(相続による)共有を解消したい」という点が中心になることが多いです。

 もともと、不動産の所有というのは、誰か一人の単独所有であるほうがシンプルです。自分の好きなように利用し、好きなときに処分できるからです。

 しかし、様々な理由で「共有」になることがあります。

 たとえば、

 

相続が発生したことによる共有状態

遺産分割の結果、共有となったもの

夫婦、親子、きょうだいなどで共有にしたもの

 

 

です。相続関係以外では、購入する資金を出した割合によって「2分の1ずつの共有」などにするケースが多いです。

 

 

 「共有」であっても、その利用について共有者同士の考えが一致していて、連携もスムーズで、利害も上手く調整が採れていれば問題ありません。

 しかし、特に、相続が関係する場合、「共有にしたくて共有にしたわけではない」というケースでは、必ずしも共有者同士に人間関係が密でない場合もあります。

 

 より極端な場合、お父さんが土地を残して亡くなり、子3人が相続人だが、1人は行方不明である、という場合などは、「残された土地(相続による共有状態の土地)をどうするか」という問題がなかなか厄介な問題になります。

 

 

 弁護士のところに、「不動産の共有を解消したい」という相談が寄せられるのは、それもそのはず。

今、全国的に「所有者不明土地」(所有者に連絡がつかない土地)が多くなり、空き地状態で放置される例も多く、問題になっています。

こうなる原因の一つに、主に相続を発端として共有状態になった不動産が、さらに時間が経って、次々に相続が起こり、共有者が多数居る状態になって処理困難になってしまったというパターンがあります。

 

2021年に民法と不動産登記法が改正され、「所有者不明土地」が発生しにくいように、解消しやすいように、ルール変更がなされています(施行時期は、2023年4月1日です)。

 

 

2 相続開始後10年経過した場合、共有物分割訴訟で遺産共有の解消が可能に

 

 共有物を解消するためには「共有物分割訴訟」という方法があります。

 たとえば、AさんとBさんが2分の1ずつの共有で家と土地を所有しているけれども、どちらかが「もう共有は嫌だ」「売ってお金に替えたい」等思ったときにとれる手段です。

 ただ、もし、この状態でBさんが亡くなって、Bさんの共有持分が相続人Cさんと相続人Dさんの相続による共有(遺産共有)になってしまうと、「共有物分割訴訟」だけでは解決できない、という問題がありました。

 

 CさんとDさんとの間も「共有」問題なのですが、相続による共有の解消は「共有物分割訴訟」ではなく、「遺産分割」手続(協議、調停、審判)を経なければならないのです。

                    図 相続による共有

 ですので、この場合の「共有解消」のためには、

 

 

CさんとDさんの「遺産分割」

 

 

をしたうえで、

 

Aさんと(CさんorDさんor両方)との「共有物分割」(訴訟)

 

をするという、2つの手続きをしなければならない、というわけです。

 

 実際には、相続が開始しても遺産に含まれる不動産の名義を長年そのまま放置しているケースが多く、そんな場合に、上のように2段階の手続きが必要になるということで、余計に「共有解消」が難しいということが多く発生していました。

 

 この問題を解消すべく、2021年民法改正では、

 

相続開始の時から10年を経過したときは、相続財産に属する共有物の持分について裁判による共有物分割が可能である(民法新258条の2 第2項)

 

という条項が新設されました。ただし、相続人が異議の申出をすれば原則にもどり遺産分割を行わなければなりませんが、新条項の活用場面は多くなると思います。

 

3 行方不明の共有者がいても、共有解消が可能になる制度の新設

 

 先に述べた通り、「共有の解消ができない」原因として、

 

共有者の一人と連絡がとれない

 

というケースは非常に多いです。

 

 この対策として、

 

 ① 行方不明の共有者の持分を、申し立てた人が強制的に取得する制度(ただし、対価の供託が必要。民法新262条の2) 

 

 ② 行方不明の共有者の持分を、他の部分とあわせて、不動産全体として売却できる制度(民法262条の3)

 

が新設されました。

 

 共有物の処分として売却を考えるとき、「共有持分だけ」を売却することもできるにはできますが、全体を売却する場合よりもかなり金額が低くなってしまいます。

 

 共有者の中に行方不明者がいるために「にっちもさっちもいかない」問題を解消するために利用できる場面は多くあると思われます。

 

4 終わりに

 

 以上、「不動産の共有解消」について2023年4月から施行される新ルールを中心に紹介しました。

 現在の法律の中でも、時間や手間はかかるけれども工夫して「共有解消」をするということに取り組んできました。

 来春までも現在のルールの中でできる限りの取り組みを続けますが、新ルール施行後はよりスピーディに(人が望まない)共有を解消していく手段が増えます。

 当事務所では、これまでの経験、ノウハウと最新のルールの両方を駆使して、問題解決に取り組んでいきます。

 不動産について、相続その他が原因で生じた「共有」問題をなるべく早く解決したいという課題をお持ちの方は気軽にご相談いただければと存じます。